ムダな廃棄をゼロにする。逆境を乗り越えた経営者がたどり着いた、ミッションの意味 フルカイテン株式会社 瀬川直寛 | 急成長企業を支援してきたマーケティング会社が厳選した急成長企業と出会える場所「LEAPLACE」 - LEAPLACE
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ムダな廃棄をゼロにする。逆境を乗り越えた経営者がたどり着いた、ミッションの意味
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ムダな廃棄をゼロにする。逆境を乗り越えた経営者がたどり着いた、ミッションの意味
フルカイテン株式会社
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在庫分析に特化したSaaS「FULL KAITEN(フルカイテン)」。アパレルや家電などの小売業における在庫運用効率を上げ、売上や粗利、キャッシュフローを最大化させるサービス。従来の小売業界では、多くの在庫の中から売上をつくり、セールをした後売れ残った商品を廃棄するのが通例だった。そこにAIや数学的見地を用いてメスを入れたのがフルカイテンだ。「世界の大量廃棄問題を解決する」をミッションに掲げる同社だが、その想いに至るまでは容易な道ではなかった。代表の瀬川氏に話を聞いた。

小売業界の常識を打ち破った「FULL KAITEN」

――FULL KAITEN」は小売業界にとって、どのような点が革新的だったのでしょうか。

似たようなサービスは存在していましたが、徹底的にやり切れていなかったと思います。

これまでは、何万点という商品に関するデータが記載されたエクセルを並べ、担当者は一行ずつそれを確認する必要がありました。

当然、全てを見ることはできないため、全体の上位10〜20%程度しか分析されていませんでした。しかし、本当に在庫の分析が必要なのは残りの8割。人員も足らず、放置されていました。

「FULL KAITEN」では、そうしたデータ集計や分析を全て自動化しています。商品を売り出すタイミングやリスク管理、パフォーマンスの上げ方などが一目で分かるようになります。これはエクセルのみの分析手法では、難しかったことです。

――コロナ禍の今、導入企業が増えてきています。それは、なぜでしょうか。

弊社のサービスは月額40万円からと比較的高額ですが、現在、アパレルなどおよそ200のブランドで活用いただいています。

この背景には、在庫過多やオーバーストア(店舗過剰)の問題が絡んでいます。日本にはお店が多すぎますし、各社の販売力を超えた在庫量を抱えています。

バブル崩壊以降、30年近く言われ続けてきたことですが、未だに高度経済成長期の価値観や分析手法から抜け出せていない現状があります。

**コロナ禍になり、在庫を効率的に捌くことが小売業者にとっての死活問題となったことで、私たちのサービスに注目いただけるようになりました。**今では、「売上が3割上がりました」「会社の現金が2倍になりました」といった声もいただいています。

「バルーン事件」で一念発起の脱サラ。笑顔にできれば誰でもよかった

――フルカイテンは、会社員時代の強烈な体験がきっかけとなって起業されたと伺いました。どのような出来事があったのでしょうか。

自分の価値観を変えた、「バルーン事件」と呼んでいる出来事が起業のきっかけでした。

大学卒業後、私はずっとIT畑を歩んできており、BtoBのシステム関連の仕事を担当していました。一方で、ある悩みが当時ありました。

それなりに高い費用を頂いてシステムを納品するのですが、心から喜んで笑顔になっているお客さんの姿を見たことがなかったのです。みんな、すごくしんどそうな顔をして働いている。

たくさん注文を頂けるし、自分の給料が上がっていくことは嬉しいことでしたが、人が喜んでくれるという手触り感がありませんでした。「一体、自分は何にお金をもらったんだろう」と考えるようになりました。

ある時、同じ部署の若手社員のために、オフィスでバルーンギフトをプレゼントしました。特注の段ボールを開いた瞬間、いくつもの風船がバーっと出てきて、それを見た周囲の同僚が皆、笑顔になったんです。

この時、風船に負けたと思いました。自分が今やっている仕事は、この1万円の風船が生み出す笑顔よりも価値を出せているのかと。

自分の納得できる生き方をするためには、いまここで会社員をしている場合じゃない。そう思ってからはすぐに会社に退職願を提出して、2012年に起業しました。

――今の事業のアイデアは、すぐに思いついたのでしょうか。

いえ、当時は、とにかく誰かを笑顔にしたい、という気持ちしかありませんでした。なので、ビジネスプランも何も全くない状態からのスタートです。

はじめに思いついたのは、結婚祝い関連の事業でした。

結婚して間もない時期で、お祝いの品をいただくことも多かったのですが、箱や包装が微妙であったり、潰れて届いたりしていました。ここに課題を感じて事業を始めたのが最初です。

それから少し経ち子どもが生まれ、ベビー服を買いに行くようになりました。子どもを抱えながらベビー服を買いにいくのは大変だし、荷物は重い。また気に入ったものは見つからず、あったと思ったらサイズが無くて何も買わずに帰ってくる。

これは世の中のお父さん、お母さんは大変だなと思ったんです。それで次は、この人たちを笑顔にしようと決め、ベビー服のECに参入しました。

しかし、ここでの在庫問題から、3度の倒産危機を迎えることになります。

儲けはいらない。3度の倒産危機、家庭崩壊からの逆転

――経営危機の当時は、どのような状況だったのでしょうか。

従業員14名の給料が数ヶ月後には払えなくなる状況でした。また、商品の仕入れの支払いすら出来ない。銀行も手を貸してくれません。

お金の問題も深刻でしたが、個人的に一番辛かったのは、妻との関係が悪くなっていったことでした。毎日大げんかです。不機嫌な顔で帰ってきた私を見て、不安になった妻が笑顔になるはずないですよね。ちょっとした一言でイラッとしたり。

そんな毎日を過ごしていましたが、妻がある時、「例えば、1週間先、1ヶ月先、1年先、どんなことをやっているか分からない人生って楽しいやん。会社員のままだったら、半年後も1年後も想像できてしまうでしょ?」と言ってくれたんです。

普通だったらいつ離婚してもおかしくないくらいの言い合いをしていたので、救われました。

――この時の苦労が、「FULL KAITEN」の原型をつくったんですね。

はい。この状況を乗り越えるために、ベビー服の在庫データと日々向き合っていく過程で、小売業界の在庫管理のやり方や多くの課題に気づきました。

そして、自分がそれまで大学などで身に付けてきたデータ分析の手法や、数学的な知見に基づいた方法論を見つけ出し、それを仕組み化していったのが「FULL KAITEN」のはじまりです。

――FULL KAITENをすぐに事業化しなかったのはなぜですか。

せっかく高い給料を捨てて、人を笑顔にするために会社を辞めたのに、また儲かる or 儲からないの世界に行ってしまうと、自分の生き方を曲げてしまうようで嫌だったんです。

商売っ気のある妻には「これ売ったら儲かるよ」と何度も言われました。でも、私はシステム関係の仕事では人を笑顔にできないと思ったから、起業してベビー服の事業をしていたわけです。それに散々苦しんだ在庫問題でも悩まなくなったから、楽しく生きていけばいいじゃないか、と頑なでした。

でも、2017年の正月明けのある日、妻が「あなたはさんざん反対するけど、自分があれだけ苦労して、笑顔を取り戻せたこのシステムがなぜ世の中の経営者を笑顔に出来ないと思うの?」と言いました。世の在庫問題の苦しみは自分が一番体感していたので、その通りだな、とぐうの音も出ませんでした。

**またこれはもう一度、BtoBのシステムの世界に戻れ、ということなんじゃないかと思いました。**その決断をするなら本気でやろうと思い、2017年5月にシードフェーズでの資金調達を実行しました。

世代を超えた社会貢献のために働く

――フルカイテンは「世界の大量廃棄問題を解決する」をミッションに掲げています。ここに込めた意味とは、何でしょうか。

私たちの事業とは結局、ミッションを通して、自分たちの子どもや孫の世代に今より良い地球を残すためのチャレンジをしている、と言えます。

「FULL KAITEN」が世の中に広まれば、少ない在庫で売上がたつので、メーカーも大量生産をしなくて良くなる。大量廃棄に伴う環境破壊や貴重な資源を消費しなくても済む。そうして世代を超えて持続可能な世界に貢献できる事業をめざしています。

サービス発足当初は、「在庫ビジネスに携わる小売業の経営者を笑顔にする」というミッションでした。でもそれは、あくまでも私個人の野望だと気づいてからは、より多くの人に共感してもらえるような目標を掲げなければならないと思いました。

今いるメンバーも、このミッションに共感して入社してくれる人が多いです。

――瀬川さんが仲間と一緒に働く上で大切に思っていることは何ですか。

ミッションを一つの船に例えることがあります。個人の野望だけの船はとても小さい。ですが、みんなの野望になった瞬間に船は信じられないほど大きくなります。

同じ船に乗るといった表面的な話ではなく、その船がみんなの船になっているか、という視点はとても重要だと思います。

もちろん、個人がどんな野望や欲望を持つことも、本当に良いと思っています。お金持ちになりたい、セルフブランディングを頑張りたい、そうした想いを持ちながらでも、メンバー共通のミッションが握れている状態が理想です。

まだ第一フェーズ。フルカイテンはこれから面白くなる

――フルカイテンは今、どのようなフェーズにある会社なのでしょうか。

在庫分析SaaSというと、業務の幅が狭そうなイメージを持つ方もいるかもしれませんが、今やっていることは構想している事業のほんの10%程度です。

現在は、サプライチェーンの川下に位置する小売業界やSPAと呼ばれる企業に対して、少ない在庫で業績を向上させられる在庫分析SaaSが主な事業です。日々ぼう大な量の売上データや在庫データが、FULL KAITENのデータベースに蓄積されていきます。

最近では、アパレル業種の導入実績が急増しており、おそらく日本で最もアパレル企業の販売データを保持しているのは弊社でしょう。

こうしたデータが蓄積されると、次にできることは、業界全体の生産量を適正化するための需要予測です。弊社は次のステップとして、サプライチェーンの川中に位置するメーカーや商社、そして卸企業向けに需要予測SaaSを展開する計画です。

――その構想がミッションを実現するための手段となるわけですね。

そうですね。サプライチェーン全体の適正化を通じて、必要な商品が必要な量だけ流通する社会の実現を目指すのが、弊社のビジョンである「スーパーサプライチェーン構想」です。

「世界の大量廃棄問題を解決する」というミッションだけが壮大でも、その実現手段が不明確では、達成は難しいでしょう。

ミッションと現在地のギャップを埋める手段が、弊社のビジョンです。だから、ビジョンは事業そのものなんですよ。

――今、この会社にジョインする面白さとは、何でしょうか。

昨年の同時期と比較すると、1年でARRが2.3倍に成長しています。社員数も2021年末から半年ほどで、倍になる勢いです。

そうした意味では、今まさに急成長が始まった会社だといえますが、それでもまだ30名程度の組織です。できる仕事の幅が広いことや、組織のOSづくりに関われる点が、今ジョインする醍醐味だと思います。

BtoB SaaSの企業でこうしたフェーズに参加できる機会は非常に稀だと思います。

転職してきている人を見ると、もっと新しい挑戦をしたいが上が詰まっていて限界があったり、会社の仕組みが完成されており業務が細分化されすぎている、といったジレンマを抱いていた方が多いです。そうした課題感を持っている方にとっては、やれることがたくさんある職場です。

「FULL KAITEN」を利用する企業を増やすことで、一人でも多くの人を巻き込み、のちの世代が笑顔になれるような、より良い地球を残していきたいです。その手段として、世界の大量廃棄という社会問題を解決する手触り感をダイレクトに感じられる仕事が、ここにはあると思います。

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