勤怠管理、給与計算、採用管理などを楽にする、クラウド型バックオフィス支援サービス「ジョブカン」。 展開している6サービス中4つが、ITトレンドが毎年発表している2018年の「ITトレンド年間ランキング」で1位に輝いた。 このジョブカン急成長の立役者が統括責任者の石山瑞樹氏だ。SaaS企業で成長目安と言われるT2D3をはるかに超える成長率で、導入社数を増やしている。 その理由は、他の企業に影響されなかった“ガラパゴス”的な独自進化だというが、果たしてどういうことなのか。石山氏に話を聞いた。

10 社だった導入数を 4 万社まで伸ばすために。検証する前にまず実行

—— T2D3、つまり 3 倍 3 倍 2 倍 2 倍 2 倍の成長率が SaaS サービスでは成功目安といわれる中、ジョブカンは 5 倍 5 倍 5 倍 3 倍 3 倍 2 倍 2 倍で伸びていると伺いました。その理由は何でしょうか。

実は私が入社した 7 年前、すでにジョブカンをリリースして 2 年が経っていましたが、導入社数は 10 社程度だったんですね。そこからの7 年間で 4 万社まで伸ばすにあたって、“ガラパゴス”的に独自の進化をさせてきました。

まずは新規導入件数を前月超えさせることに毎月コミットしたのですが、ターニングポイントになったのは、アカウント発行を Web で完結できるようにしたことと、無料プランを用意したこと、そして公式サイトの大幅リニューアルを 3 つ同時に行ったことです。

一つひとつ効果測定をしながら前に進んだのではなく、いいと思ったアイデアはすぐに実装してみて、効果がなければ戻せばいいという考えでやってきました。だから、3 つのうちどれが良かったのかはわからないのですが、結果的に状況は圧倒的に好転。翌月には資料請求件数と導入件数が 3 倍になったんです。

この成果によって、私は事業責任者として自らの意思決定で、次々と変革を起こせるようになりました。

戦略的に IT トレンドでランキング 1 位を獲得。問い合わせ件数は 15 倍に

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—— たとえば、どのようにサービスを変えてきたのでしょうか。

毎週のように何かしらを変えたり追加したりしていたのですが、真っ先に行ったのは導入のハードルになっていた「初期導入費用」の撤廃です。その後、あれば嬉しい「Want」機能ではなく、これがないと導入できない「Must」機能を網羅すべく追加していきました。

たとえば、いくら勤怠サービスに興味があっても「残業代は日ごとに集計したい」「有給は半日ごとに付与したい」など、導入するには細かい部分が Must 条件になる事が多くその部分が足りていなかったりしました。そこでとにかくお客様にヒアリングを繰り返して、ニーズと汎用性の高い機能は毎週のように実装していきました。

それ以外にも、法人向け IT 製品比較・資料請求サイトの「IT トレンド」で、勤怠管理ランキングで 1 位を取るために、いろんな工夫を凝らしました。すると、ほどなくして 1 位になり、月に 10 件程度だった問い合わせ数が 150 件以上に増え、公式サイトの PV も 2 倍に伸ばせたんですね。

こうした積み重ねが、5 倍 5 倍 5 倍 3 倍 3 倍 2 倍 2 倍という驚異的な成長につながっていきました。

当時は競合サービスではなく、他のクラウドサービスや C 向けサービスを参考にすることが多かったですね。そもそも、B 向けサービスはアカウント開設のためにメールでの問い合わせや資料請求などが必要だ、というのが少し前まで当たり前の世界でした。だけど、やってみてダメだったら戻せばいい。

この考えを貫いたことがサービスを成長させたのだと思っています。

契約のための訪問は不要。C 向けサービスの考えを導入

—— ガラパゴス的な独自進化とおっしゃっていましたが、他の SaaS サービスのやり方と違う部分はどこでしょうか。

まず、多くの企業が展示会やマーケティングで獲得したリードに、インサイドセールスが電話をかけてアポイントを取り、フィールドセールスが訪問して契約につなげていると思います。だけど私達の契約の多くは、お問い合わせに対して営業が直接電話をかけて、そのまま契約につなげる仕組みで契約件数を大幅に増やしています。

というのも、Web でアカウントを発行できるようにしたから、アポイントを取る必要がない。まさに C 向けサービスの考えに近いと思います。

また、ブランディングのために展示会には出展しますが、そのときに名刺交換などで獲得したリードに対してはホットリード以外は強く営業していません。

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—— それはなぜでしょうか?

ジョブカンは勤怠管理、給与計算、採用管理など 6 シリーズを展開しており、勤怠管理だけでも月に数千のお問い合わせがくるんですね。SaaS サービスは資料請求からの契約率は平均 10%といわれるなか、ジョブカンの場合は 30%近い契約率となっています。

数千のお問い合わせから 30%が契約につながる一方で、展示会からの契約率は 8%程度。だから、展示会へのアプローチは熱量の高い顧客に関しては営業しますが、それ以外はブランド認知に近い形で考えています。

IT リテラシーのハードルを下げたことで、全国の中小企業が導入

—— 30%という高い契約率を維持している秘訣は何だと思いますか?

ひとつは支払い体系を幅広くしたこと。

クレジットカードしか導入していないサービスは多いと思うのですが、ジョブカンはクレジットカードと請求書発行、ネットプロテクションズによる収納代行を選択できます。すると、全体の 5 割が収納代行を利用しており、さらにそのうち 4 割が「コンビニ払い」を選択しているんですね。 つまり全体の 2 割がコンビニ払いということ。

頭から「法人だからクレジットカードだけでいいだろう」という考えでいたら、請求書発行と収納代行を選択している 5 割の企業が契約に至っていないということ。だから私はよく、メンバーにも「思い込みを疑え」と言っています。

また、給与計算サービスのリリース時も、導入するのは他の給与サービスを使っている企業や、外部に委託している企業のリプレイスを想定していました。だけど蓋を開けてみたら導入してくれたのは「今まで手計算していた企業」がものすごく多い。それだけ日本全国にはアナログな業務をされている企業がたくさんいるということなんです。

だから、メンバーから「電話対応をやめて、チャットとメールのみにしませんか」と言われたときも、アナログの電話対応はなくしませんでした。こうした独自のノウハウはたくさんありますよ。

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—— 契約率が高い一方、解約率を下げるための工夫などあれば教えてください。

解約対策はまだうまくできてないと思っていますが、それでも解約率は 1%を下回っています。世の中的には合格点なんですかね。ただ、今定義されている解約率の算出方法については疑問点が多く、累計導入社数に対し当月解約数が何社かだけで考えると、普通に導入社数が増えれば恐らく解約率は自然と下がっていくものだと考えています。なぜなら SaaS サービスの解約理由の多くが運用がうまくできなかったという初期離脱だからです。

例えば、1 万社有料顧客がいて、毎月 1,000 社の契約を増やしている企業がいた時に、解約件数が 200 件だとしたら、この解約の内訳ってすでに運用が回っている 9,000 社の中で 100 社、先月契約した企業の 100 社みたいな内訳なんですね。

毎月 1,000 社ペースで積み上げて 2 万社の有料顧客になった時、解約が 400 社になるのではなく、300 社になる仕組みなんですよね。なので、解約率は累計導入社数が増えたほうが自然に下がると思っています。

ガラパゴス的な独自進化によるノウハウを武器に、SaaS サービスで No. 1 へ

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—— SaaS サービスが盛り上がっている現在、他とは少し違う考え方で進化していることがわかりました。

ジョブカンは SaaS のなかでも後発組ではありますが、もともと私がまったく異業種からジョインしたこともあって、他とは違う考え方とやり方でサービスを成長させてきました。

マーケティング費用にしても他と比べて 5 分の 1 じゃないかなと思っていて、他社と比較しても少ないと思います。組織の人数にしても、導入社数 3 万社までは 60 人体制で十分でした。今は投資時期かなと思い倍くらいにしてますが。

あと、同じ SaaS サービスでも中小企業と大企業ではやり方が違います。

それでも、同業他社のやり方を真似るのではなく、思い込みを疑って選択肢を広げ、本質を見抜きながらサービスを作り続けてきたことで、今まで IT リテラシーの低い企業が導入しにくかった SaaS サービスのハードルをぐっと下げたと自負しています。

私が実現したいのは、アナログで大変なバックオフィス業務を行っている日本全国の中小企業にサービスを導入してもらって、全国の企業を支えること。SaaS の No.1 を目指します。

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