株式会社トランスリミットがリリースしたスマホアプリ『Brain Wars』『Brain Dots』『Craft Warriors』『Highway Surf』は、 累計で6,500万ダウンロードを突破。しかもユーザーの約95%が海外ユーザーという、日本国内のゲーム会社の中でも希有な存在です。 そして現在も世界的ヒットを目指して新タイトルを続々とリリースしています。 創業者である高場大樹氏は、新卒でサイバーエージェントに入社。 同社に在籍中も「いずれ起業して、世界を目指す」という想いを持ち続けていました。 その後、株式会社トランスリミットを創業し、1年も経たずに世界中のユーザーを魅了してしまうゲームアプリを開発しました。 今回は、そんな高場氏のモノづくりの極意に迫ります。

小学 4 年、パワプロでインターネットのすごさを体感。開発者になることを決意

—— トランスリミットのゲームアプリ 4 タイトルは、いずれも全世界公開でユーザーの大半が海外です。高場さん自身が世界を相手にすると決めたのは、何か原体験があるのでしょうか。

最初にインターネットってすごいと思ったのは小学 4 年の時。当時、新しいゲームソフトが発売されると、必ず書店に攻略本が並びました。きっかけとなった『実況パワフルプロ野球』(以下、パワプロ)が発売されたときも、かなり分厚い攻略本が出たんです。

友達との対戦で勝つために選手を育成して独自のチームをつくるんですが、パワプロには選手パスワードという機能があって、他人が育成した選手でもその選手のパスワードを入力すると、自分が育成した選手と同様に自分で使えるようになる機能があります。攻略本にも選手パスワードが掲載されているのですが、最後の数ページだけでした。

ところがインターネット上には、攻略本に掲載されている選手なんかよりも、もっと凄い能力を持つ選手のパスワードがザクザクあるんです。パワプロで遊んでいる人たちが自分で育てた選手をどんどんインターネットにアップしていたからです。これには「すごいな!」とびっくりしました。それを知ってからは友だちに負けることはありませんでしたね(笑)。

インターネットで検索すれば情報の流通量は攻略本の比ではないし、もっと良質な情報が手に入る。小学 4 年でインターネットの本質に気づき、以来ずっとインターネットの魅力に魅了され続けていました。この頃には、将来はインターネットや開発の分野で仕事をしたいと決めていましたね。

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—— それが明確に「世界を目指す」という想いに繋がったのはいつですか。

Google や Facebook、YouTube などのサービスに触れた学生時代です。これらのサービスのように僕らが普段の生活で利用し、恩恵を得ている素晴らしいサービスを、自分もエンジニアとして手がけたいと思いました。さらに、インターネットのように世界中どこからでもアクセスできる性質を活かすなら対象は日本人だけではなく、世界だよねと。自然と“世界中で使われるようなサービスを作りたい”という想いになりました。

—— 卒業後、サイバーエージェントに入社されて、どのようにキャリアを磨いていかれたのですか。

入社後は、エンジニアとしての実力を身につけることに徹しました。まずは先輩に追いつこうとがむしゃらにやってましたね。 1-2 年目は全社の基幹システム/ネットワークを担当し、その後に自らの希望で海外向けゲーム部門に異動し、Facebook プラットフォーム向けコミュニティサービスやソーシャルカードゲームのサーバサイドアプリケーション開発やインフラに携わりました。

インフラは慣れるのに苦戦したのですが、アプリケーション開発をするようになったら、割とすんなりいけて光が見えましたね。その後、経験を積むうちにいつの間にか両方ともそれなりにできるようになっていました。この時は開発チームのリーダーも務めました。周りとコミュニケーションを取りながら進めるのが比較的得意だったので、早くから全体を指揮する側に回ったという感じです。コミュニケーションやビジネスロジックに強いエンジニアは少ないので、そこに僕の強みを見出していました。

—— いずれ起業を考えていたからビジネス思考をご自身に課していたのでしょうか。

もともと自分自身はビジネス志向が強い方だなと思っていて。やることに対するこだわりより、成し遂げることへのこだわりが強いんです。だからエンジニアとしても、プログラム言語を極めるためではなく、“世界を獲るサービスをつくるため”にやっているというのが近いなと。

そういう意味では、プログラム言語とか技術はその時に最適な選定であれば何でもいいと思っています。世界を獲れないなら、どんな完璧なコードでも高度な技術でも全く意味がないから技術自体にこだわりはありません。逆に“世界を獲る”ためならエンジニアの枠に収まらず、企画やデザイン、マーケティングなどほぼ全てが自分の領域だと考えて動いています。そこを常に意識していたから、結果的に必要に駆られて幅広く能力を着けていくことができたと思います。

「経験上、最初の 1〜2 ヶ月でイケるかどうかはわかる」大変なのは新タイトルを生み出す時

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—— 創業当時に大変だったことはありますか。

創業から立ち上がるまでの流れはスムーズでした。2 人で起業して、最初のタイトルですぐに数千万ダウンロードを達成しましたし、1年半程で 20 名規模の組織へと拡大しました。

大変なのは、新しいタイトルを生み出す時。はじめはトントンといったのですが、それ以降は結構苦戦していて正直スランプに陥っているかもしれません。そもそも面白いゲームはそう簡単に作れるものではありません。手数を増やして次々と開発するんですが、光るものにはそう出会えるものではありませんね。

『Craft Warriors』は創業以来一番しんどい開発でしたね。当初 1 年未満でリリースする予定が、なかなか面白くならず、ズルズル延びて結局 2 年の月日が掛かってしまいました。結果的には、グラフィックは綺麗だし、誰でもモデルを作れるという創作意欲に富む面白いゲームに仕上がりました。

—— 停滞期に先の見えない不安のようなものは感じませんでしたか?

当然あります。“先”をつくるのは社長である僕の役目、なんとかするしかないと思っていました。『Craft Warriors』は「面白くなりそうだ!」という直感から始まったのに、進めていくうちに面白くなった部分となかなか面白くならない部分がある。じゃ、どう変えたら全部が噛み合って面白くなるのか、ああでもないこうでもないとぐるぐる回っていたような感じでした。

『Brain Dots』は絶対にいけるという確信があって 4 カ月で一気に開発。その直感通りに成功をしました。経験上“いけるかどうか”は最初の 1〜2 カ月でわかります。3 カ月やっても面白くならないものは 1 年やっても花が開かない可能性が高い。早い段階で可能性を見いだせないなら本来は辞めるべきなのかもしれません。とはいえ実際には自分でつくっているから思い入れもあるし、愛情もある。要は客観視できなくなる……子どものようなものだから。他人のサービスを評価するのとは、やはり違いますね(笑)。

—— 面白くならないときは、どうやって乗り越えるのですか。

なんとか何かをひねり出します。自分の時間すべてを使って、ひたすら課題に向き合います。あまり他のみんなに何かを求めるようなことはなく、ただ自分の課題として向き合うことが多いです。休日も子どもと遊びながらも、頭の中の 50%くらいは考えていますね。いずれにしても生み出すというのは簡単なことではありませんね。

常に、世界を意識して意思決定をしているか。その決断が世界へ近づく一歩になる

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—— 高場さんが考える、世界に通用するモノづくりに“必要なもの”とは何でしょうか。

大前提として、まず常に世界を視野にいれること。その上で環境や開発現場の状況の変化に柔軟に対応する。そして何よりアウトプットにこだわっています。

開発過程で、“常に”製品がもっともよくなる方へ意思決定ができるかどうか。場合によっては、企画をひっくり返す、辞めるという大胆な決断もいい。常に世界を意識し近づくための意思決定をしていれば、必然的に近づいていくと考えています。

—— メンバーのマネジメントで大事にしていることは?

実はマネジメントはあまり得意ではありません(笑)。もちろん社長としてヒット作を出して会社を存続させる責務がありますので、チーム作りは最も重要なことです。ただ、僕のマネジメント手法は、常にプロジェクトのど真ん中に入って先導するというやり方。自ら率先して動き、それを見て周りのメンバーがついてくるかどうかという感じです。マネジメントというよりはリーダーですね(笑)

—— 世界で遊ばれていることを実感したり、嬉しく感じたりするのはどんな時ですか。

世界のダウンロード比率の方が高いので、普段はあまり体感はありませんが、各国のダウンロード数を見たり、Twitter や Instagram などソーシャルメディアを見て、「世界で遊ばれているのだな」とオンライン上でひっそりと感じています。海外に住む友人から「電車の中で Brain Dots をやっている人がいたよ」と連絡をもらったりもします。自分達が作ったゲームが世界でも普通に使われているんだなと嬉しくなりますね。

また、海外のカンファレンスに呼ばれると、当社のゲームタイトルを知っている開発者が多くて驚きます。お客様に愛されるのはもちろんですが、海外の開発者の方々に「参考にしている」と言われるのも嬉しいですね。デベロッパーの評価は非常に価値があると思うので、世界を目標にしてよかったなと感じた瞬間でした。

ブランドになるような会社を目指して

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—— モノづくりで “世界を獲る”先にある、高場さんの夢はどんなものでしょうか。

「トランスリミットのつくるものって面白いよね」といわれる会社にしたいです。たとえば Apple の新製品は必ず買うとか、ディズニーやピクサーの新作映画は必ず観るという人は多いと思います。それは会社のクオリティに信頼があるから。日本の IT 企業には少ないですが、目指すのはそんなブランドイメージを持つような会社です。

具体的には、子どもから大人まで楽しめて、世界中に受け入れられているアニメーションやストーリーを提供し続けているピクサーが理想。映画とゲームで分野は違いますが、目指しているのはピクサーのような会社です。

—— ということはトランスリミットも、ゲームに限らず新たな事業展開もありえるのでしょうか?

ゲームだけにこだわらず、別事業の展開もすごくやりたいですね。映画もつくってみたいし、Twitter や Instagram のような SNS にも興味があります。ただ、ちゃんとゲームで成功した上で別の展開をしたいですね。

—— 映画はいいですね。いつごろになりそうですか。

具体的にはまだですが……僕はけっこう映画監督に向いているのではないかと思っています(笑)。エンジニアでキャリアをスタートしてますが、企画もデザインも社長業もする。とにかく必要なことは何でもします。すべてにおいてレベルが高くないと良い判断も良いモノづくりもできないと思っているので、常に自分の能力を上げる努力をしています。

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—— 休む暇がなさそうですね。

やってもやっても終わりがない感じ、しんどいですけれど(笑)。いきなり成功できるほど簡単な世界ではありませんので、経験を積み重ねて着実に成功の確率を上げていくのが大事だと思っています。

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