人が生きていく上で欠かせない「衣食住」の「食」。近年、BtoC領域に出前館やUber Eatsが登場したことで、デリバリー市場の認知が一気に広まり、市場の拡大が加速している。 実はそれより前の2009年からBtoB領域の「中食(デリバリー)」に目をつけ、日本最大級のフードデリバリー総合モールとして事業成長を続けているのがスターフェスティバルだ。「中食」業界のトップランナーとして、食の領域にテクノロジーの力で革命を起こしている。 具体的に、食の領域にはどういった課題があり、スターフェスティバルはどんな切り口から解決につなげているのだろうか。取締役執行役員COOの澤口玄氏に、スターフェスティバルの社会貢献性と可能性を聞いた。

企業の食に革命を起こし、飲食事業者に新たな収益源を

—— BtoB 領域の「中食」トップランナーとして事業を展開されているスターフェスティバル。具体的にどういった社会課題を解決しようとしているのでしょうか。

ここ 10 年の間に、さまざまな業界・領域でテクノロジーによる変革が進みました。しかし、人に欠かせない「衣食住」の「食」に関しては、ほとんどテクノロジーが入っておらず、より豊かに便利になるような変革は進んでいません

しかも、飲食事業者が抱える課題は深刻で、高齢化が進み人口減少が加速する日本では、このまま何もしなかったら外食産業は右肩下がりになることがわかっています。

ただ、食の市場を「外食」と家で調理する「内食」、デリバリーやテイクアウトなどの「中食」に分けて見ると、外食と内食は顕著に縮小しますが、中食だけは伸びているんですね。

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とはいえ、飲食事業者が「今日からデリバリーを始めよう」と思っても、販売先や配送する物流の仕組み、業績を伸ばすための販促のノウハウがなければ参入は難しいのが現状です。

一方で、飲食事業者の顧客となる「企業で働くオフィスワーカー」たちは、毎日必ず企業内でランチなどの「食」が発生しているのに、その行動や選択肢は昔から変わりません。「仕方なくコンビニ弁当を買う」「外に出る時間がないから食べない」など、人間にとって大切な「食」がないがしろにされているケースはとても多いでしょう。

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そこで、スターフェスティバルでは飲食事業者がデリバリービジネスを始めるために必要な、「製造」以外の「商品開発」「販促」「受注」「配達」を提供することで、飲食事業者に新しい収益の機会を提供。そしてオフィスワーカーにはより豊かな食を便利にお届けすることで、両者の幸せを創出しているのです。

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私たちが掲げる理念は「ごちそうで 人々を より 幸せに」で、 “ご馳走”という漢字の通り、人々の幸せのために馳せ走ることで、世の中に幸せな人を増やしたいと考えています。その実現のためのビジョンが「新たな食文化を創造する」こと。

新たな食文化を創造するために、作り手である飲食事業者と、消費者であるオフィスワーカーに対して新しい価値を提供しているのです

—— 近年、BtoC 領域で高まっているデリバリーニーズは、BtoB 領域でも追い風になっているのでしょうか。

そうですね。毎日外食というわけにもいきませんし、共働き世帯や高齢化が進んでいるので、毎日自宅で調理することも段々難しくなってきています。そういった社会変化からも「中食」の伸びは実感しています

加えて、ここ数年で出前館や Uber Eats が登場し、世の中にデリバリーの存在を広く認知してくれていることも我々の追い風になっていますよ。

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潜在的なオフィスワーカーのランチ市場は 10 兆円

—— スターフェスティバルの主力サービスは何でしょうか。また、事業領域にどういった可能性があるのかも教えてください。

主力サービスは、会議やイベント向けにお弁当・ケータリングをデリバリーする「ごちクル」と、毎日日替わりでお弁当が会社やオフィスビルに届く、デリバリー型社員食堂の「シャショクル」「ごちクル Now」というサービスです。

そもそも、オフィスワーカーのランチの選択肢は昔から「会社に届く」「食べに行く」「社食がある」「買いに行く」「お弁当を持ってくる」「食べない」という 6 つで、今は「会社に届く」選択肢しかサービス化できていません。

ただ、この選択肢は我々が網羅できる可能性がとても高く、たとえば毎日「お弁当を持ってくる」人は、必ずしも自分で作った、もしくは家族やパートナーが作ったお弁当を毎日食べたいから持ってきているわけではないですよね。ほとんどの目的は“節約”でしょう。

統計データによると、企業向けデリバリーとして顕在化しているマーケットは約 5,000 億円規模ですが、6 つの選択肢を含めた潜在的なオフィスワーカーのランチ市場は 10 兆円と考えられています。

単純計算でも、約 6,700 万人の就労人口が年間 250 営業日働き、お昼に 600 円のランチを食べているとしたら、それだけで 10 兆円。だから、「お弁当を持ってくる」選択肢だけでも本質的な課題を解決できるサービスを作れたら、大きな市場のシェアを取れる可能性が高いのです

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また飲食事業者は、デリバリーに加えて座席数や稼働率に左右されない「テイクアウト」も増やせば、新たな収益源につながります。そこに、我々のお客様であるオフィスワーカーを送客し、ランチ需要からディナー需要につなげられたら、より飲食店の発展に寄与できるはず

こうして6つの選択肢に合うプロダクトをパッケージで提供し、オフィスワーカーがお得にその日の気分でランチを選べるようになれば、10 兆円のマーケットを獲得できるのも夢ではないと考えています。

—— たしかに、持っているアセットと知恵や工夫を組み合わせると、いろんな可能性が見えそうです。

そうなんです。我々は、企業とオフィスワーカー、飲食事業者のアカウントを抱えているため、ゼロから営業やマーケティング活動をせずに新規事業の展開が可能です。

それに、企業としても従業員への「食の提供」は福利厚生になりますし、「健康経営」という観点でも食は重視されています。食を起点に、地域経済の活性化や既存サービスの拡張はもちろんのこと、世の中の時流に乗った価値あるサービスを生み出せるポジションに、スターフェスティバルは立っていると考えています。

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ビジネスの難易度が高い「食」の領域はブルーオーシャン

—— 食の領域にテクノロジーがほとんど入っていないから、可能性が無限に広がっているということですね。

社会問題となっている食品ロスの課題にも何らかの形で貢献したいですし、最近増えつつある「お弁当の容器を有害ではない素材のものにしてほしい」「ゴミも回収してほしい」といったニーズにも対応したい。まだできていないこと・できることはたくさんあります

しかも食の領域は「安心安全」はもちろん、消費期限があるため「デリバリーのリードタイムに限りがある」「在庫としてストックできない」など、参入してもビジネスとして成立させるには難易度が高い

特に我々が展開しているデリバリー事業は、配送コストがかかるため物流の仕組みが整っていないと難しいですし、全国展開しようとすれば人手も各地にお弁当を作ってくれる拠点も必要になります。実際、ここ数年で食の領域にスタートアップが誕生しては消えていくケースをたくさん見てきました。

だから、「食」は扱うのが難しいぶん、競合が少ないブルーオーシャンなんです

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私たちは今までの 11 年間で、先行投資を惜しまずに時間をかけて基盤をつくってきたので、現在ごちクルは年間1万 5,000 社以上とお取引いただき、シャショクルを契約している数千人規模の企業は約 100 社にまで拡大しました。そしてようやく 100 億円を超える事業規模になった。

いよいよこれからは、収益を上げて事業を拡大させる成長フェーズに入ります。生み出す利益は次の事業のタネに投資しながら、食の領域にイノベーションを起こしたいと考えています。

やってやれんことはない。できる理由を考える

—— スターフェスティバルはどんなカルチャーを大切にしているのでしょうか。

掲げているバリューは、「手を挙げ挑戦せよ」「最速で最高をめざせ」「やってやれんことはない」の 3 つ。前例がないことに“できない理由”を探すのではなく、どうやったらできるのか“できる理由”を考えることを大切にしています。

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“できる理由”を考える文化が根付いているのは、代表の岸田が楽天イーグルスの立ち上げメンバーの一人だったことが関係しています。

当時、岸田たちは球場も選手もゼロの状態から、選手を集めて球場を確保し、半年後の開幕戦に間に合わせるというミッションを課せられていました。普通に考えれば「無理だ」と諦めそうなものですが、彼らは“できる理由”だけを考えて、たった半年で楽天イーグルスの立ち上げを実現させたのです。

この強烈な原体験から、やろうと思えば何だってできるんだという精神がスターフェスティバルの根幹に根付き、現在は大切なカルチャーになっています。

—— そのマインドがあるからこそ、難しい食の領域でも基盤を作れたのですね。

そうだと思います。カルチャーフィットを大事にしてきたので、社員数が約 400 名になった今でも、このマインドはずっと変わっていません。できる理由を考えた結果、できないのであれば仕方ないけれど、最初からできない理由を考える人はいない

今、スターフェスティバルには管理栄養士やレストランのシェフ、物流、IT など多様なバックグランドを持つメンバーが集まっており、全員が「やってやれんことはない」とポジティブに考えています。一緒に働いていて誇らしいと思えますし、とても素敵だなと思っています。

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事業立ち上げもキャリアチェンジも、自ら手を挙げる

—— 今後の展開はどうお考えでしょうか?

今は BtoB ビジネスを展開していますが、BtoC の領域に進出する可能性はゼロではないと思っていますし、自分たちで製造工場を持ったり、農業に参入したりする可能性もあるかもしれません。もちろん、海外進出は当然考えているので、準備や調査は進めています。

だけど、今僕たちが実現させるべきは、オフィスワーカーの食環境を豊かにして、飲食事業者に新たな収益源を提供すること。この目的に対して提供できている価値はまだ一握りしかなく、やるべきことはたくさんあります。社員からの事業提案も活発なので、まずはこの目的を達成したいですね。

—— 実際、社員が手を挙げて事業化されたものはあるのでしょうか。

手を挙げる文化を大切にしているので、年間 10 を超える事業提案が岸田に上がっていますし、そこから事業化したものもあります

たとえば、お弁当の配送の空き時間を有効活用する、配送シェアリングサービス「スタロジ」や、高齢者施設や学童、幼稚園・保育園等におやつを定期配送するサービス「たびスル」は社員からの声で生まれました。

「たびスル」とは、施設などに地方の銘菓を含めたおやつを2週間分まとめて配送するサブスクリプションサービスです。施設では毎日決まった時間におやつを出しているのですが、スタッフが近所のスーパーに買いに行くのも、経費精算も手間。しかもスーパーに並ぶおやつは頻繁に入れ替わらないので、利用者に飽きさせてしまう課題もありました。

この“ちょっとしたお困りごと”を解決する「たびスル」は 4 年前にスタートし、現在は約 2,500 の施設に提供しています。事業化を牽引した社員は、「もっとスピードを上げて拡大したい」と自分たちでサテライトオフィスを借りて拠点も移動させました。

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—— ニッチですが、顕在化していなかったニーズですね。

そうですね。手間だった日常の“お困りごと”を、テクノロジーを活用して解決した良い例だと思います。これは、中食でのノウハウと物流の仕組みを持っていたからこそ実現できたサービス。食の領域にはいくらでもサービスのタネが落ちているので、人が増えれば増えるほど、新しい価値を生み出せると思っています。

それから、手を挙げる文化は新規事業だけでなく、キャリアチェンジにも適用しています。たとえば、営業からエンジニアに転向したい、バックオフィスから企画に転向したいといった希望があれば、事業や部署、役職、社歴等に関係なく手を挙げられて、極力、その希望を叶えられるような機会を作っている。

もちろん、状況によって 100%叶うわけではありませんが、手を挙げる人が挑戦できる文化は大切にしていますよ。

—— 社内でキャリアチェンジができるのは夢がありますね。社会貢献性の高いビジネスで、主体的に働けるのは、人生を豊かにしてくれそうです。

そうですね。人の生活に密着したリアルな領域を、テクノロジーの力でより便利に豊かにしていく貢献性と、自ら手を挙げて事業にもキャリアにも主体的になれる組織文化は、私たちがずっと大切にしてきたことです。

そうした文化が事業にも組織にも心理的安全性を生み、何かコトを成し得たい、キャリアを積み上げたいという人が集まってきたのだと思います。

これからも「まずはやってみる」ことで、食の領域にイノベーションを起こしながら、日本社会にたくさんの幸せを創出したいですね。

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