「生体認証で生活をより便利に安全に」をミッションに、指紋や顔などの生体情報で本人であることを本人が証明する世界を目指しているLiquid。2013年に創業後、世界で初めて生体認証のみでの本人認証・決済サービスの商用化に成功し、2018年には33億円を調達。安全性が高く利便性の良いサービスを独自のアルゴリズムで開発している。そんな同社が目指すのは、分断のない世界。行政や病院、交通機関、金融、小売などあらゆるサービスをシームレスにつなぎ、全世界の全人類に認証を通じて「居場所」を提供しようとしている。具体的にどんな思想で何を成し遂げようとしているのか、最高執行責任者COOの長谷川敬起氏に伺った。

高度な生体認証技術で、すべての人に居場所をつくりたい

—— 認証で人々に居場所を提供するとは具体的にどういうことで、どんな社会問題を解決しようとしているのかを教えてください。

90 年代半ばからの約 20 年間、世界はインターネットの発展、グローバル化、市場開放が一気に起きたことで、さまざまな分断を生みました。貧富の差や世代間格差、さらには Brexit やトランプ、ドイツでの移民排斥などに代表される、融合の揺り戻しとしての分断の加速です。 また、AI やロボティクスなどのテクノロジーの進化によって、さまざまなシーンで人手不足解消や生産性拡大のため、機械化は否が応にも進みます。

こうした新しい時代で最も大切になるのは、「あなたの居場所、権利、正当性はちゃんとここにあるよ」と簡単に証明できる仕組みです。Liquid が成し遂げたいことの一つは、「生体認証技術」でその仕組みを作り上げること

しかも、自分たちだけでこの仕組みを作ろうとは考えておらず、国内外のさまざまな企業や関係省庁と連携して、みんなで一つの仕組みを作れたらと考えています。そうすることで初めて、分断のないなめらかな世界が作れるはず。

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登録された個人の生体情報があれば、行政や病院、銀行、交通機関など何を利用するときも、「本人が本人であることを証明できる」世界国内のみならず、世界中で認証されることで、すべての人に居場所を提供したいと考えています。 選挙の投票もオンラインで身一つでできるし、初めて行った病院の診察でも自分のカルテが閲覧できる。飛行機にも身一つで乗れて、正当な権利があれば、どこの鍵だって開けられる。まだ口座開設率が 50%を切っているような国においても、銀行の口座が簡単に作れるようになる。

全て、その人の居場所を作ることに繋がっているんです。

さらに、自国から他国に移り住む“移民”も、「この人はこういう人で、ここにいていい人だ」と証明できれば居場所を提供しやすくなりますし、海外でパスポートをなくしたとしても、生体情報があれば本人であることが証明できます。

法律でカバーしきれていない関係性、たとえば LGBT や事実婚など血縁関係のない人たちが一緒に暮らすには、どんな認証や仕組みがあれば社会から認められるのかを考えることも今後ますます重要でしょう。

多様な家族の在り方や、人類の新しい暮らし方も「認証」して、誰もが居場所を持てる世界をつくりたい。「生体認証」で解決できる社会問題は多岐にわたっているのです。

認証とは「特定の権利や正当性を証明する行為」なので、一度の登録であらゆる機関に通用する仕組みになるほど、利用者からすると利便性がよく、ネットワークが共有されていることの価値が増大する。Liquid はこれを目指しています。

生体認証は、セキュリティと利便性の両方を高く維持できる

—— 生体認証はセキュリティ面でも安心なのでしょうか。

はい。まず事実として、Liquid では既に数十社の金融機関から、顔認証を使った本人確認サービス「LIQUID eKYC」の導入を決定いただいており、セキュリティチェックに厳しい銀行をはじめとする大手金融機関の要求を全てクリアしています

非常に重要な個人特定情報や顔データなどをお預かりするわけですから、自社専用のセキュリティルームを持ち、出入りを 24 時間監視し、そこからしか重要なデータへのアクセスができないようにするなどの仕組みを構築しています。

通常、セキュリティレベルが高いと利便性が悪くなるのですが、生体認証のすごいところは、セキュリティレベルが高い、もしくは本人確認が重要な領域でも、高い利便性を維持できることなんです。

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たとえば、先日 JR 東日本がスマホや IC カードをかざさずに改札を通れる、タッチレス改札を発表しましたが、この高い利便性を実現できるのは、少額決済でセキュリティ要件が低いからなんですね。同じことを 10 万円の買い物にも適用しようとしたらセキュリティ面で難しいでしょう。

一方、生体認証は金融機関での口座開設や高額な決済、選挙投票、鍵の開錠、海外渡航など、セキュリティレベルの高いシーンで活用できます。しかも、「顔」や「指紋」で認証するため、今までのように ID/PASS を入力する必要がなく、なりすまし詐欺の被害も防げるんです。

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日本でも直近で3倍も増えて増加傾向にあるフィッシング詐欺は、二段階認証を設定しても簡単に突破されます。また、クレジットカードの不正利用を防ぐために、オンライン決済時にパスワード入力を求める3 D セキュアが導入されていますが、いろんな ID/PASS を記憶に頼るのは限界ですよね。

実際に、すべての利用サービスの ID/PASS を分けて某クラウドサービスで管理していた人が、フィッシング詐欺ですべて抜き取られてしまったという事例もあるほど。

でも、あらゆるサービスが生体情報で認証されるようになれば、今後「アカウント更新のため、クレジットカード番号や ID/PASS を入力してください」といったメールが届いても、すぐに詐欺だと気づくでしょう。

生体認証は、まだなんとなく不安に思う人もいると思いますが、これこそ非常にセキュアでいろんな不正を防げる上に、利便性が高いのです。

サービス利用に面倒な本人確認はしたくない

—— 具体的に展開しているプロダクトについて教えてください。

2018 年 11 月に「犯罪収益移転防止法」が一部法改正されたことで、金融機関などで対面や郵送で行なっていた本人確認が、オンラインで完結できるようになりました。

そこで提供しているのが、画像処理技術と生体認証クラウドによる高精度の画像照合で、本人確認をスマホで完結する「LIQUID eKYC」です。

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金融機関に導入後、ユーザーには旧来の対面や郵送での本人確認と、スマホ完結型のどちらかを選んでもらう形で提供し始めました。すると、スマホ完結型の本人確認を8割以上の人が選んでいたんですね。

しかも、不備があって旧来の本人確認をすることになった人から「スマホの本人確認をもう一回やらせて欲しい」と連絡が入るケースがよくあって。

理由を聞くと「10 分で口座を開設できるスマホ完結型の本人確認があったから、この金融機関を選んだのに、窓口や郵送の旧来の方法でしか本人確認ができないなら、この金融機関を選ぶ理由がない」と言われたんです。

この、生体認証が選ぶ理由になっているのはとても大きなポイントで、すでに使っているサービス、たとえばスマホ決済で生体認証機能を使うために後から顔を登録するのと、サービスを開始するための本人確認要件がもともと厳格で、その選択肢の一つとして顔登録をするのとでは、意味が違うんですね。

前者はすでにスマホで決済ができるから、わざわざ顔を登録するのは面倒ですが、後者はサービスを使うために必要だから、顔を登録するのは面倒ではありません。むしろ、簡単だから選びたい。

そうして選んでもらった「LIQUID eKYC」に、行政や企業、さまざまなサービスが連携していたら、一度生体情報を登録したユーザーは、他のサービス利用開始時に個人情報を登録することなく、生体認証で簡単にサービスが利用できるようになります

ありがたいことに、大手企業やメガバンクなど多くの企業から出資いただいているため、この世界観の実現は、そんなに遠くない未来だと思っています。

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正しい選択をするのではなく、自分の選択を正しいものにする

—— 壮大な思想の実現に向けて、行政や企業を巻き込んでいく。そんな Liquid にはどんな人が集まっているのでしょうか?

社会の役に立つ仕事をしたい、意義ある仕事をしたい、先端技術に触れたいという人が多いと思います。特徴的なのは、映画『マイノリティ・リポート』やアニメ『攻殻機動隊』など SF 好きが集まっていること。よく社内でお酒を飲みながら「未来はどうなるのか」という話で盛り上がるのですが、その時間はすごく楽しいですね。

また Liquid は、1プロダクトでの勝負ではなく、複数のプロダクトが積みあがりながら、世界をつなぐ未来を作っているので、短距離走ではなくマラソンの戦い方をしています。

そのために導入したのが、金曜から月曜までの4日間は、どの2日を働く日にしてもいいとした制度。しかも、その2日はフルリモート勤務が可能です。特にエンジニアからは、土曜や日曜に誰にも話しかけられることなくリモートで集中してコーディングができると評判がいいですよ。

逆にものづくりに拘っているので、火水木はみんなで膝を突き合わせて、感覚的な UX の部分を論じながら、プロダクトの品質を高めるために同じ場所で働くことを重視しています。

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—— メリハリがある働き方をしながら未来を作っているのですね。最後に、長谷川さんが仕事をする上で大切にしていることを教えてください。

個人的には、「正しい選択をするのではなく、自分の選択を正しいものにする生き方」を大切にしています。

どちらの道に進むべきか、どれから手をつければいいのか、正解は誰にもわかりません。だからこそ、「こっちの方が世界は良くなる」と強く思えて後悔しない道を選ぶ。その思いが強ければ強いほど、自分の選択を正しくしようと動くから、結果的にうまくいくのだと思っています。

会社としては、行動指針の一つに「ファーストインパクト」を掲げていて、誰もやっていないことを誰よりも先に実現することを大事にしています。現に、eKYC を提供している会社はたくさんありますが、登録した生体情報があらゆる企業やサービスを横断し、シームレスに使えるようにつなげているのは Liquid だけ。

誰もやっていないことを誰よりも早く取り組んで、誰よりも早く失敗してノウハウを得たい。そうして、認証で全人類に居場所を与え、シームレスに便利で安全な暮らしにつなげたいと思っています。

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